エニーキャスト
複数の拠点で同じIPアドレスを使い、送信元からの経路制御によって選ばれた一つの拠点へ届ける通信方式。
イマシルちゃんの解説
同じ受付番号を、いくつかの支店で使っているとするよ。
お客さんがその番号を指定すると、道案内のルールに従って一つの支店へ案内されるんだ。
全支店へ同じ荷物を配るわけではないよ。
支店が休みになったときには、道案内を変えて別の支店で受け付けることもできるんだ。
より深い解説
送り先を決める仕組み
複数の拠点が、サービスの同じIPアドレスを含む経路を広告する。各ルータは通常の経路制御に従って転送先を選ぶ。パケットは、その結果として選ばれたいずれか一拠点へ到着する。
経路上で近い拠点へ届くことが多いが、地理的に最短の場所や、必ず応答時間が最小の場所を選ぶ仕組みではない。経路の属性や運用方針も選択に影響する。
配送の範囲を比べる
| 方式 | 届け方 |
|---|---|
| ユニキャスト | 通常は特定の一つの宛先へ届ける |
| マルチキャスト | 参加しているグループの受信者へ届ける |
| この方式 | 同一のサービス宛先を持つ拠点のうちいずれか一拠点へ届ける |
マルチキャストのように、参加者全員へ複製して届けることは目的としていない。
利用場面と障害時の動作
DNSなどのサービスで、拠点を分散させるために使われる。利用者が指定する宛先を保ったまま、受け付ける場所を分散できる。
独自の例として、東西二つの拠点が同じサービス用アドレスを広告しているとする。西の拠点が停止したとき、監視と連携してその拠点の経路広告を取り下げると、経路が収束した後は東の拠点へ届けられる。故障を検知し、広告を制御する仕組みが必要であり、アドレスを重ねるだけで自動復旧するわけではない。
経路の変更中には、パケットの損失や一時的な到達不能が起き得る。拠点が変わっても処理を続けられる設計が必要になる。
接続の継続性に注意する
通信の途中で別の拠点へ経路が変わると、接続やログインなどの状態を新しい拠点が持っていない場合がある。長い接続を扱うサービスでは、経路の安定性や拠点間の状態共有を検討する。
この方式そのものには、通信を暗号化する機能や相手を認証する機能はない。必要な保護はTLSなどで別に行う。
IPの版と過去問の読み方
IPv6では、ユニキャストと同じ形式のアドレスを複数のインタフェースへ割り当てる仕組みとして仕様に位置付けられている。一方、IPv4でも経路広告を使って運用できる。RFC 4786は両方の版を対象としており、IPv4では利用できないと覚えるのは適切ではない。
平成24年度秋期午前Ⅱ問13の公式正解はウで、IPv4とIPv6の両方が備えるマルチキャストの説明である。ただし、選択肢エの方式もIPv4で運用できるため、実際に利用できる機能という観点では選択肢の区別に注意が必要である。公式正解を記録したまま、アドレス仕様上の位置付けと実際の運用を区別して理解する。