エッジコンピューティング

読み:えっじこんぴゅーてぃんぐ / 英語表記:Edge Computing

データを生み出す端末や利用者に近いネットワークの末端側に計算資源を置き、遠くのクラウドへ送る前にその場で処理する分散型のコンピューティング形態である。応答までの遅延を小さくし、クラウドへ送る通信量を減らせる。

イマシルちゃんの解説

工場のカメラや機械のセンサーは、休みなくたくさんのデータを生み出しているよ。
それを全部遠くのクラウドへ送って判断を待つと、返事が来るまでに時間がかかっちゃうんだ。
回線も、映像のような大きなデータでいっぱいになりやすいの。
そこで、データが生まれる場所の近くにサーバを置いてその場で処理するのが、エッジコンピューティングという処理の形態だよ。
異常を見つけたらすぐ機械を止めて、クラウドには結果だけを送れるんだ。
すばやい反応が必要な仕組みには欠かせない考え方なんだよ。

より深い解説

定義と位置付け

エッジコンピューティング(Edge Computing)は、計算・保存などの処理を、データの発生源や利用者の近くで行う形態である。特定のプロトコルや一つの規格の名前ではなく、処理をどこに置くかという構成の考え方を指す。

「エッジ」は、ネットワークの中心から見た末端を意味する。NISTのFog Computing Conceptual Model(SP 500-325)は、エッジを「端末とその利用者を含むネットワークの層」と説明している。工場内のサーバ、店舗に置く小型サーバ、通信事業者の基地局に近い設備などが、処理を置く場所の例である。

クラウドを置き換えるものではない点が重要である。大量のデータの長期保存、多数の拠点をまたぐ分析、学習済みモデルの作成などはクラウドに向く。即時の判断と前処理をエッジで行い、集約した結果をクラウドへ送るという役割分担が基本になる。

近くで処理する理由

遠くで処理すると遅くなる最大の理由は、距離そのものにかかる時間である。光ファイバーの中を信号が伝わる速さは、真空中の光の速さの約3分の2、約200,000km/sである。この距離に比例する時間を伝搬遅延と呼ぶ。

次は独自の計算例である。処理するサーバまでの距離が1,000kmの場合と10kmの場合を比べる。ここでは光ファイバーが直線で敷かれているものとする。

片道にかかる時間 = 距離 ÷ 伝わる速さ
1,000kmの場合 = 1,000km ÷ 200,000km/s = 0.005秒 = 5ms
往復 = 5ms × 2 = 10ms
10kmの場合の往復 = 10km ÷ 200,000km/s × 2 = 0.0001秒 = 0.1ms

実際の経路は直線ではなく、ルータでの処理やキューでの待ち時間も加わるため、往復時間はこれより長くなる。それでも距離による遅延は、回線を速くしても縮められない。帯域を増やすと一度に送れる量は増えるが、信号が届くまでの時間は変わらないからである。

もう一つの理由は通信量である。次の独自例で、工場の監視カメラの映像をすべてクラウドへ送る場合と、エッジで解析して結果だけを送る場合を比べる。

すべて送る場合 = 50台 × 6Mbit/s = 300Mbit/s
結果だけ送る場合 = 50台 × 20kbit/s = 1,000kbit/s = 1Mbit/s

映像をすべて送る構成では、拠点からの上り回線に常時300Mbit/sが必要になる。エッジで異常の有無や人数などの結果だけを取り出せば、必要な帯域は大きく下がる。映像のような個人に関わるデータを拠点の外へ出さずに済むことも、利点の一つである。

さらに、クラウドとの回線が切れても拠点内の処理を続けられる。設備の停止判断のように、回線障害で止まってはならない処理をエッジに置く理由になる。

処理を置く場所の選択肢

エッジと呼ばれる場所は一つではない。端末からクラウドまでのどこに処理を置くかで、遅延・処理能力・管理のしやすさが変わる。

処理を置く場所例特徴
端末そのものセンサー付きの機器、カメラ内部最も近いが、処理能力と電力に制約がある
拠点内のエッジ工場・店舗内のサーバやゲートウェイ拠点内の機器を集約して処理する。設置と保守は利用者が行う
通信事業者のエッジ基地局や局舎に近い設備移動する端末にも近い場所で処理できる
クラウド事業者のデータセンター処理能力と保存容量が大きいが、端末からは遠い

どの場所を選ぶかは、要求される応答時間、扱うデータの量と機密性、設置場所の環境から決める。

端末とクラウドの間に層を重ねる考え方

クラウドと端末の間に、処理を担う層を何段も置く考え方をフォグコンピューティングと呼ぶ。

NISTのSP 500-325(2018年)は、フォグを階層構造を持つモデルとし、エッジは少数の周辺機器に限られる傾向があると区別している。処理を担う機器はフォグノードと呼ばれる。ただし、両者の範囲の分け方は資料によって異なることがある。試験では「クラウドより端末に近い場所で処理する」という共通点と、フォグが中間の層を何段も重ねることを意識した言葉であることを押さえる。

通信事業者の網の中で処理する

通信事業者の網の中、利用者に近い場所でアプリケーションを動かす仕組みをMECと呼ぶ。標準化団体のETSIが検討を進めてきた。当初はMobile Edge Computingの名前で、携帯電話網を対象にしていた。

ETSIは2017年に名称の「Mobile」の部分を改め、Wi-Fiや固定回線などほかのアクセス網も視野に入れた(ETSIの発表)。現在の正式名称の頭文字Mは、複数のアクセス網を表す「マルチアクセス」である。

5Gは高速・大容量、低遅延、多数同時接続を特徴とする。ただし、無線区間が速くなっても、処理するサーバが遠ければ距離による遅延は残る。5Gの低遅延を実際のサービスで生かすために、MECのように網の中で処理する仕組みが組み合わされる。

CDN・クラウドとの比較

CDNもエッジサーバを利用者の近くに置くため、エッジコンピューティングと混同しやすい。CDNの主な目的は、Webコンテンツのキャッシュを近くに置いて配信を速くすることである。エッジコンピューティングは、データを受け取ってその場で判断や加工を行う処理そのものを近くへ移す。CDNの配信拠点でプログラムを実行するサービスもあり、両者は重なり合う部分を持つ。

観点エッジコンピューティングクラウドでの集中処理
端末からの距離近い遠い
応答の速さ速くできる距離と経路の分だけ遅くなる
上位回線の通信量前処理で減らせる生データをすべて送る
回線断の影響拠点内の処理を継続できる処理が止まる
処理能力の拡張設置した機器の能力に縛られる必要に応じて増やしやすい
運用管理多数の拠点に機器が分散し手間が大きい集中して管理できる

表のとおり、エッジは応答と通信量で有利な一方、管理の手間と拡張性では不利になる。すべてをエッジへ移すのではなく、処理ごとに置き場所を決める。

使われる場面

これらはIoTシステムの設計とも深く関わる。多数のセンサーをゲートウェイで集約し、前処理したデータをMQTTなどのプロトコルでクラウドへ送る構成が典型である。

設計と運用の注意点

エッジの機器は、多数の拠点に分散して置かれる。データセンターのような管理された環境ではない場所に置くことも多い。このため、クラウドでの集中処理にはない課題が生じる。

課題設計・運用での対策
機器の盗難や不正な操作設置場所の物理的な保護、保存データの暗号化、機器の認証
ソフトウェア更新の手間遠隔から一括で更新・監視できる管理の仕組みを用意する
クラウドとの回線断拠点内での処理継続と、復旧後のデータ再送の手順を決める
拠点ごとの処理能力の不足ピーク時の処理量を見積もり、超えた分をクラウドへ回す設計を考える
データの不整合拠点とクラウドで、どちらの値を正とするかを決める

回線断に備えるには、エッジ側で一時的にデータを保存する容量も見積もる。例えば上の例の1Mbit/sの結果データを1時間ためるなら、1Mbit/s × 3,600秒 = 3,600Mbit = 450Mバイトが必要になる。障害の想定時間から必要な容量を逆算する。

午後での問われ方

参考資料

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