WPA
WEPの弱点への暫定的な対応として導入された、無線LANのセキュリティ方式である。TKIPを中心に鍵管理や改ざん検出を改善し、事前共有鍵による認証とIEEE 802.1Xを利用する認証に対応する。
イマシルちゃんの解説
無線LANの電波は、通信している相手以外にも届くことがあるよ。
勝手に接続されたり内容を読まれたりしないよう、通信を守る必要があるんだ。
WPAは、以前のWEPに見つかった弱点を補うために作られたセキュリティ方式だよ。
既存の機器も生かしやすいよう、暗号の基本部分を残しながら鍵の扱いなどを改善したの。
送るデータごとに暗号化に使う値を変え、不正な書換えも調べるようにしたんだ。
ただし、WPAにも弱点があるため、現在の接続を守る方式としては勧められないよ。
古い方式を改良する途中の段階として理解し、新しく設定するときは後継のWPA2やWPA3を検討するんだ。
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より深い解説
WEPからWPAへ
WPA(Wi-Fi Protected Access)は、2003年にWi-Fi Allianceが導入した、無線LANのセキュリティを強化する仕組みである。IEEE 802.11iの標準化が完了する前に、WEPの問題へ対応するための暫定的な方式として作られた。
WEPには、暗号化の際に使う値の扱いなどに設計上の弱点があった。WPAは暗号化のための鍵の処理、通信の改ざん検出、古いデータの再送を悪用した攻撃への対策を改善した。ただし、WEPから受け継いだ仕組みもあり、根本的に新しい暗号方式へ置き換えたわけではない。
古い方式で使われた鍵と暗号
WEPはWired Equivalent Privacyの略である。送受信者に同じ秘密のWEPキーを設定する共通鍵暗号を使う。WEPキーは通常40または104ビットで、フレームごとの24ビットの初期化ベクトル(IV)と組み合わせ、RC4に与える鍵を作る。
RC4は、鍵から疑似乱数の列であるキーストリームを生成し、平文との排他的論理和で暗号化するストリーム暗号である。RC4は1バイトずつキーストリームを生成する。送受信側で同じ鍵材料から同じ列を作れるため、受信側は同じ演算で平文へ戻せる。
WEPでは、設定した同一のWEPキーを多くのフレームで使い続ける。短いIVは繰り返されやすく、RC4への鍵の与え方にも弱点がある。静的な秘密とIVの組合せが再利用されることなどにより、多数の通信を観測すると解析が可能になる。毎回すべてのフレームのRC4鍵が完全に同一なのではなく、共有するWEPキーが固定で、IVを変える設計にも十分な強さがなかったという点を区別する。
またWEPの改変検出に使うCRC-32は、攻撃者による意図的な書換えを防ぐ強いメッセージ認証ではない。WEPは現在の通信の保護に使わない。
通信を守る仕組み
WPAで中心的に使われたのはTKIP(Temporal Key Integrity Protocol)である。暗号化アルゴリズムには、WEPと同じRC4が使われるが、暗号化に使う鍵をフレームごとに変えるための鍵ミキシングなどを導入している。
| 仕組み | 何のためにあるか |
|---|---|
| フレームごとの鍵の処理 | 同じ鍵の使い方が繰り返される危険を減らす |
| 長い初期化ベクトル | 鍵に関する値が短時間で繰り返されることを減らす。長さは48ビット |
| Michaelと呼ばれるMIC | 受信したデータの不正な変更を検出する |
| リプレイ対策 | 過去に送られたデータの使い回しを検出する |
TKIPはWEPより安全性を高めたが、現在の基準では十分に強い方式とはいえない。一部にはAESを使える実装もあったが、WPAを代表する保護方式はTKIPである。
TKIPの鍵ミキシングには、一時鍵、フレームを送る装置のMACアドレス、48ビットのTSC(TKIP Sequence Counter)を使う。IVとして運ぶカウンタ情報を、次の二段階で組み合わせる。
| 段階 | 主な入力 | 作るもの |
|---|---|---|
| フェーズ1 | 一時鍵、送信装置のMACアドレス、TSCの上位32ビット | TTAKと呼ぶ中間値 |
| フェーズ2 | 中間値、一時鍵、TSCの下位16ビット | フレームごとのRC4鍵材料 |
この鍵材料を基にRC4がキーストリームを作る。鍵混合の中間値やRC4へ渡す鍵と、実際に平文へ排他的論理和を取るキーストリームは同じものではない。送信装置のアドレスを混ぜることで、別の装置が同じカウンタ値を使う場合も鍵材料を区別しやすくする。
PersonalとEnterprise
WPAには、接続者の確かめ方が異なる二つの主な利用形態がある。
| 方式 | 認証の考え方 | 主な用途 |
|---|---|---|
| WPA-Personal(WPA-PSK) | アクセスポイントと端末で事前に決めたパスフレーズを使用する | 家庭や小規模なネットワーク |
| WPA-Enterprise | IEEE 802.1XとEAPを使い、利用者ごとに認証する | 企業や学校 |
Enterprise方式では、アクセスポイントなどがRADIUSサーバへ認証のやり取りを中継する構成が一般的である。
Personal方式では同じパスフレーズを共有するが、すべての通信を一つの固定された暗号鍵で処理するわけではない。接続時には4ウェイハンドシェイクなどの手順を使い、通信に必要な鍵を作る。
なぜ現在は推奨されないのか
WPAのTKIPには、安全性上の弱点や制約が見つかっている。弱いパスフレーズを使ったPersonal方式では、認証時のやり取りを手掛かりにオフライン辞書攻撃を受けるおそれもある。
後継のWPA2ではAESを使うCCMPが中心となり、WPA3ではパスワードを用いた認証方式も改善された。現在、新しく無線LANを構築する場合は、互換性を考慮しながらWPA2またはWPA3を選び、WPAやWEPは避ける。
似た名前の方式との違い
| 方式 | 代表的な仕組み | 覚えておきたい点 |
|---|---|---|
| WEP | RC4を利用する古い保護方式 | 設計上の弱点が大きく使用しない |
| WPA | TKIPを中心に鍵管理などを改善 | WEPより改善されたが、現在は使用を避ける |
| WPA2 | AESを用いるCCMPが中心 | 暗号化方式が大きく強化された |
| WPA3 | SAEによる認証などを導入 | パスフレーズ認証や管理フレーム保護を強化した |
WPA・WPA2・WPA3は無線LANのセキュリティ方式の世代であり、Wi-Fi 4・Wi-Fi 5・Wi-Fi 6などの通信速度や無線方式の世代とは別の分類である。
参考資料
実際の試験ではここに出る!全1問
ネットワークスペシャリスト
- 午後Ⅱ