キャリアアグリゲーション

読み:きゃりああぐりげーしょん / 英語表記:Carrier Aggregation

キャリアアグリゲーションは、携帯電話網で複数の搬送波を同時に利用し、合計の帯域幅を広げる通信技術である。同一の基地局ノードが扱う周波数資源を束ね、端末へのデータ伝送能力を高める。

イマシルちゃんの解説

携帯電話会社が使える電波は、ひと続きの広い範囲にまとまっているとは限らないんだ。
キャリアアグリゲーションは、データを運ぶ電波であるキャリアを束ねて使う通信技術だよ。
離れた周波数も一緒に使えるので、一つだけを使う場合より多くのデータを運べるようになるの。
基地局は端末の対応状況や電波の状態を見て、使うキャリアを決めるんだ。
利用者が通信先ごとに電波を選び直す必要はないよ。
ただし混雑や受信状態にも左右されるから、束ねる数が倍になれば速度も必ず倍になるというわけではないんだ。

より深い解説

周波数資源を束ねる仕組み

携帯電話の無線区間では、使用できる周波数の広さに制約がある。事業者が別々の帯域に周波数を保有していても、一つのキャリアしか使えなければ、それらを一台の端末の通信に同時活用できない。キャリアアグリゲーションは、この制約を緩和する技術である。略記には CA が使われる。

束ねる単位をコンポーネントキャリア(Component Carrier、CC)という。それぞれが一定の周波数範囲を占め、データを送るための無線資源を持つ。基地局は複数の単位にデータを割り当てる。周波数が離れていても扱えるため、連続した広い周波数を新たに確保しなければ高速化できない、という制約を小さくできる。

LTEではRelease 10のLTE-Advancedで導入され、5Gの無線方式であるNRにも引き継がれている。ただし、組み合わせられる数や周波数は規格の世代と機器の能力によって異なる。特定世代の最大値を、すべてのLTE端末や5G端末の能力として扱ってはならない。Ericssonによる仕組みの説明

接続の中心になるセルと追加するセル

基本となるLTEの構成では、端末の接続を支える主たるセルをPCell(Primary Cell)、追加して利用するセルをSCell(Secondary Cell)という。前者は接続の確立や移動管理・セキュリティに関わる基準となり、後者は端末の能力に応じてデータ伝送に利用できる資源を増やす。

ここでいうセルは「一つの基地局がある場所」と完全に同じではない。同じ地点でも、周波数ごとに異なるセルを提供できる。逆に、同じ基地局ノードの制御下にある無線装置が別の地点に配置される場合もある。したがって、アンテナの設置場所の数だけではこの技術を使っているか判断できない。

無線接続を制御するRRC(Radio Resource Control)によって、端末に利用候補となる追加セルなどを設定する。設定した追加セルを実際に使える状態へ移す操作がアクティベーションである。設定済みのセルが常にデータを運んでいるわけではなく、通信量や電波状態などに応じて利用状態を変えられる。接続の中心となるセルと追加セルの役割、設定と利用状態を区別すると、端末のログを読みやすい。3GPP TS 36.300の7.5節・11.2節

周波数の配置による三つの形

「バンド」は規格で定めた周波数帯を指す。同じバンドの中でも隣接したキャリアと離れたキャリアがあり、異なるバンドをまたぐ組合せもある。

配置の種類周波数の関係活用する場面
帯域内連続同じバンド内でキャリアが隣り合う連続して確保できる周波数をまとめる
帯域内非連続同じバンド内でキャリアの間に隔たりがある同一バンド内に分散した割当てを利用する
帯域間異なるバンドに属するキャリアを組み合わせる低い周波数帯と高い周波数帯などを併用する

いずれも、まとめた周波数範囲が物理的に一つの連続した電波へ変わるわけではない。端末の受信回路や送信回路は、使う周波数と同時利用の条件に対応する必要がある。3GPP TS 36.300の5.5節・附属書J

端末と基地局の対応条件

端末がバンドAとバンドBをそれぞれ単独で利用できても、両方を同時に使えるとは限らない。確認すべきなのは個々の対応周波数に加え、同時利用できるバンドの組合せ、キャリア数、各キャリアの幅などである。基地局側の設定と事業者の提供条件も一致する必要がある。Nokiaによる対応条件の説明

下りは基地局から端末、上りは端末から基地局への通信である。下りで三つのキャリアを束ねられる端末でも、上りは一つだけという構成があり得る。上りでは送信回路の能力や端末の送信電力にも制約がある。「下りで対応している」ことから上りも同じ構成であるとは判断できない。FDDとTDDをまたぐ組合せも規格上存在するが、実際に使えるかは対応する組合せを確認する必要がある。3GPP TS 36.300の5.5節

低い周波数帯で接続を支え、高い周波数帯で大きな伝送能力を得る設計も可能である。ただし、高い周波数帯の電波が届かない場所で、その分の伝送能力まで得られるわけではない。複数のセルの利用可能範囲が重なることが必要であり、移動によって追加セルを利用できなくなれば、使える資源も減る。Ericssonによるカバレッジと組合せの説明

通信速度を読むときの注意

説明用に、20 MHzと15 MHzのキャリアを束ねる構成を考える。名目上の幅の合計は35 MHzである。しかし、これは周波数の量を足した値であり、そのまま35 Mbit/sを意味しない。

実際のビットレートは、各キャリアの変調方式、誤り訂正の符号化率、同時に使う空間ストリーム数、制御用の資源などに依存する。条件のよい各キャリアの伝送能力を足し合わせられればピーク速度は高まるが、一方の電波品質が低ければ単純な比例にはならない。TDDでは上りと下りに割り当てる時間の割合も効く。

さらに、どの端末へいつどれだけの資源を割り当てるかを決めるスケジューリングにより、同じ基地局を使う利用者の間で資源を分ける。そのため、規格上の最大速度、端末の最大能力、利用中に測定した実効速度は別の値になる。「二つ束ねたから常に二倍」という説明は、電波品質と混雑条件を省いている。Ericssonによる無線資源の利用と性能の説明

複数の経路を使う技術との違い

技術主に変えるものキャリアアグリゲーションとの関係
MIMO複数アンテナを用いた空間方向の伝送各キャリアで併用できる。空間多重による高速化と周波数の追加は別の手段である
デュアルコネクティビティ主・副の二つの基地局ノードへの接続ノードごとのセル群の中で CA を併用できる
ハンドオーバー移動などに伴う接続先の切替え同時利用する資源を増やす操作とは異なる。移動に伴って集約構成を変更することはある

二つの基地局ノードを用いる方式は DC と略される。同じ無線方式同士の組合せだけでなく、LTEを主側、NRを副側とするEN-DCなどもある。「4Gと5Gを同時に使う」とだけ説明された構成を、直ちに CA と決め付けてはならない。接続するノードの構成と、各ノードが扱うキャリアの構成を分けて読む必要がある。Ericssonによる両方式の比較

期待した性能が出ないときの切り分け

同じ場所で二台の端末を比較し、一方だけ集約が有効になる場合は、まず端末が通知する対応能力と基地局が選んだ構成を確認する。両方が各バンドを単独で使えるという情報だけでは、同時利用できることの証明にならない。電波測定結果、追加セルの設定、利用状態を順に確認すれば、非対応なのか、設定済みだが使われていないのかを区別できる。

集約が動作していても速度が出ない場合は、各セルの受信品質、再送、資源の割当て量を調べる。無線区間に余裕があるなら、基地局からコアネットワークへ接続するバックホールや、接続先サーバまでの経路が制約になっている可能性がある。無線資源を増やしても、その先の経路容量を超えることはできない。

例えば、追加セルを利用できる屋外では速く、建物内へ入ると速度が落ちる一方で通信自体は続くなら、集約対象の一部が届かなくなったという仮説を立てられる。この場合は、単なるインターネット障害と判断せず、移動前後のセル構成と電波品質を突き合わせる。設計では最大キャリア数だけでなく、利用場所で実際に重なるサービス範囲と混雑時の性能を評価することが重要である。

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