回線速度
通信回線が1秒間に送り出せるビット数で表した、回線の伝送能力である。値は回線の規格や契約で決まる上限であり、ヘッダーなどを除いた利用者データが運ばれる速さは、これに伝送効率を掛けた実効速度になる。
イマシルちゃんの解説
回線の契約書やLANの規格には「100Mbit/s」のような数字が書いてあるんだ。
これは1秒間に何ビットの信号を送り出せるかを表す性能の値で、回線速度というよ。
ファイルの大きさはバイトで書かれることが多いから、ビットにそろえてから比べるのが大事なの。
ただ、この数字は信号を送り出す速さの上限なんだ。
宛先などを書いたヘッダーや送信の合間の時間もこの中に含まれるから、運べるデータの量はもう少し少なくなるよ。
回線を選ぶときは、運びたい量と時間から必要な速さを逆算して決めるんだ。
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より深い解説
定義と位置付け
回線速度は、回線が単位時間に送り出せるビット数であり、通常はビット/秒(bit/s、bps)で表す。伝送速度とも呼ぶ。LANではイーサネットの規格名、WANでは通信事業者との契約内容によって値が決まる。100BASE-TXなら100Mbit/s、1000BASE-Tなら1Gbit/sである。
回線速度は「設備の能力」を表す値であり、通信の結果ではない。実際にどれだけ運べたかはスループット、どれだけ混んでいるかは回線利用率、あるデータを送り終えるまでの時間は転送時間として別に扱う。この記事では、回線速度そのものの読み方と、必要な回線速度を見積もる方法を中心に説明する。
| 指標 | 何を表すか | 単位の例 |
|---|---|---|
| 回線速度 | 回線が送り出せる速さの上限 | bit/s |
| 実効速度 | 利用者データを運べる速さの目安 | bit/s |
| スループット | 実際に運べた量の速さ(測定や結果) | bit/s、pps |
| 回線利用率 | 回線速度に対して実際に流れた量の割合 | % |
| 転送時間 | あるデータを送り終えるまでの時間 | 秒 |
単位と接頭辞の読み方
回線速度の計算で最も多い誤りは、単位のずれである。回線速度はビットで数えるが、ファイルや電文の大きさはバイト(オクテット)で示されることが多い。1バイトは8ビットなので、バイトで与えられた量は8倍してからビット/秒で割る。
接頭辞にも注意する。回線速度の「k」「M」「G」はSI接頭辞であり、1kbit/sは1,000bit/s、1Mbit/sは10^6bit/sを表す。一方、記憶容量やファイルの大きさでは、1Kバイトを2^10=1,024バイトとして扱う場合がある。この曖昧さをなくすため、IECは2^10を表す接頭辞としてキビ(Ki)、2^20を表すメビ(Mi)を定めた。NISTの解説でも、1kbitは1,000bit、1Kibitは1,024bitと区別されている。
| 表記 | 意味 | 値 |
|---|---|---|
| 1kbit/s | SI接頭辞 | 1,000bit/s |
| 1Mbit/s | SI接頭辞 | 1,000,000bit/s |
| 1KiB | 2進接頭辞 | 1,024バイト |
| 1MiB | 2進接頭辞 | 1,048,576バイト |
試験では「1Kバイト=1,024バイトとする」「1Mバイト=10^6バイトとする」といった条件が付くことが多い。条件があればそれに従い、なければ回線速度の側は10進で扱う。次の自作例で差を確かめる。
データ量:64Kバイト(1Kバイト=1,024バイトとする)
回線速度:64kbit/s(=64,000bit/s)
64 × 1,024 × 8 = 524,288ビット
524,288 ÷ 64,000 = 8.192秒
両方のkを1,000とみなすと8秒となり、約2.3%短く見積もってしまう。選択肢が近い値で並ぶ問題では、この差が正誤を分ける。
公称の速さと実際に運べる速さ
回線速度は、回線上に流れるすべてのビットを数えた上限である。そこにはヘッダー、FCS、プリアンブル、フレーム間ギャップなどの制御用の情報や間隔も含まれる。そのため利用者データが運ばれる速さは、回線速度より必ず小さくなる。
この割合を表すのが伝送効率である。効率をη(0〜1の値)とすると、利用者データを運べる速さは次のように求める。
実効速度 = 回線速度 × 伝送効率
例えば50Mbit/sの回線で効率が80%なら、利用者データを運べる速さは50 × 0.8 = 40Mbit/sである。この効率はヘッダーの割合だけでなく、確認応答を待つ時間や再送も含めて、問題文で一つの値として与えられることが多い。フレームの構造からオーバーヘッドを積み上げる計算は、スループットの記事で扱っている。
回線速度を上げても、効率を下げている原因が別にあれば、データを運べる速さは比例して伸びない。例えばTCPのウィンドウが小さく往復遅延が大きい経路では、回線速度より先にウィンドウの大きさが上限になる。このような原因の切り分けはボトルネックの記事で扱う。
信号の変化の速さとの関係
物理層では、1回の信号の変化(シンボル)で何ビットを運ぶかによって、ビット/秒と信号の変化の速さが一致しない。1秒あたりの信号の変化の回数を変調速度といい、単位はボー(baud)である。
回線速度(bit/s)= 変調速度(baud)× 1シンボルあたりのビット数
自作例として、1秒間に2,400回変化する信号で、1シンボルに16通りの状態を使う16QAMなら、1シンボルで4ビットを運ぶ。回線速度は2,400 × 4 = 9,600bit/sである。状態の数を増やせば、信号の変化の回数が同じでも回線速度を上げられるが、雑音に弱くなる。変調方式そのものはデジタル変調方式の記事で扱う。
必要な回線速度を逆算する
設計では、運ぶべきデータ量と許される時間から、必要な回線速度を求めることが多い。考え方は転送時間の式を変形したものである。
必要な回線速度 = データ量(ビット)÷ 許される時間 ÷ 伝送効率
自作例として、拠点のバックアップ900Mバイト(1Mバイト=10^6バイトとする)を10分以内に送りたい。伝送効率は75%とする。
- ビットにそろえる:900 × 10^6 × 8 = 7.2 × 10^9ビット
- 必要な実効速度:7.2 × 10^9 ÷ 600秒 = 1.2 × 10^7bit/s(12Mbit/s)
- 効率で割る:12Mbit/s ÷ 0.75 = 16Mbit/s
検算として、求めた値に0.75を掛けると12Mbit/sになり、7.2 × 10^9 ÷ 1.2 × 10^7 = 600秒となり、条件の10分に一致する。実際の設計では、ほかの通信と同じ回線を共有することや、利用率を高くしすぎると遅延が増えることを考え、さらに余裕を持たせる。どの程度の余裕が必要かは回線利用率の記事で扱う。
音声のように一定の速さで流れ続ける通信では、1本あたりの必要な速さを積み上げる。音声をディジタル化するとき、標本化定理により、信号の帯域の2倍以上の頻度で標本化すれば元の波形を再現できる。必要な伝送速度は「標本化の回数/秒 × 1標本のビット数」である。自作例として帯域7kHzの信号を16ビットで符号化するなら、14,000回/秒 × 16 = 224kbit/sとなる。電話の音声に使うG.711は、8,000Hzで標本化して1標本を8ビットで表すため、64kbit/sである。
IP電話では、音声データにヘッダーが加わる分も含めて回線速度を見積もる。自作例として、G.711の音声を20msごとに1パケットにまとめ、IP・UDP・RTPのヘッダーを合わせて40バイトとする。
1パケットの音声データ:64,000 × 0.02 ÷ 8 = 160バイト
1パケットの長さ :160 + 40 = 200バイト
1秒あたりのパケット数:1 ÷ 0.02 = 50個
1通話の必要な速さ :200 × 8 × 50 = 80kbit/s
符号化の速さは64kbit/sでも、ヘッダーの分だけ必要な回線速度は25%増える。イーサネットのMACヘッダーとFCSの18バイトも加えると、218 × 8 × 50 = 87.2kbit/sになる。どの層のヘッダーまで数えるかは、問題の条件に合わせる。パケットにまとめる間隔を長くすればヘッダーの割合は下がるが、その分だけ音声の遅延が増える。
回線の種類による違い
同じ「100Mbit/s」でも、回線の種類によって意味が変わる。設計や計算の前に、次の点を確かめる。
| 観点 | 確かめる内容 |
|---|---|
| 通信の方向 | 送信と受信を同時に行えるか、両方向で一つの速さを分け合うか |
| 上りと下り | ADSLやモバイル回線などでは、上りと下りで速さが異なる非対称の回線がある |
| 品質の約束 | ベストエフォート型の回線の値は最大値であり、混雑時の速さは保証されない。帯域保証型は契約した速さを確保する |
| 共有の有無 | 無線LANやリピータハブでつないだLANは、つながる端末全体で一つの媒体を共有する |
全二重の1Gbit/sのリンクは、送信1Gbit/sと受信1Gbit/sを同時に扱える。ただし、一方向の通信が1Gbit/sを超えるわけではない。半二重では両方向の通信が一つの1Gbit/sを分け合う。計算では、どちらの方向の通信量を比べているのかを明確にする。
インタフェースの速度を確かめる
LANのポートは、相手の機器とオートネゴシエーションで速度とデュプレックスを決めることが多い。片側だけを固定設定にすると、もう一方が半二重を選び、デュプレックスの不一致が起きることがある。この状態ではリンクは上がっても、衝突や誤りが増えて通信が極端に遅くなる。「リンクは確立しているのに遅い」という症状では、両側の速度とデュプレックスの表示を比べる。
監視では、SNMPでインタフェースの速度を取得し、通信量と比べて回線利用率を計算する。RFC 2863のifSpeedはビット/秒で速度を表すが、32ビットの値なので約4.29Gbit/sを超える速さを表せない。そのような高速なインタフェースでは、100万ビット/秒を単位とするifHighSpeedを使う。監視ツールの利用率が100%を超えるような不自然な値になったら、速度の取得元や設定値が実際の回線と合っているかを確認する。
WAN回線では、機器のポートの速さと契約した速さが一致しないことがある。例えば1Gbit/sのポートで、契約は200Mbit/sの帯域保証回線という構成である。このとき通信事業者の網はそれを超えた分を破棄することがあるため、利用者側の機器でシェーピングを設定して送出を契約の速さに合わせる。
設計と障害切り分けでの考え方
回線速度を決めるときは、次の順に考える。
- 業務ごとに運ぶデータ量と、許される時間を洗い出す
- ビットにそろえ、必要な実効速度を求める
- 伝送効率で割り、必要な回線速度を求める
- 同時に流れる通信を合算し、ピーク時の量で比べる
- 遅延を抑えるための利用率の余裕と、将来の増加を加えて回線を選ぶ
「回線を増速したのに速くならない」という申告では、回線速度以外の上限を疑う。ほかの区間の回線速度、ファイアウォールの処理能力、TCPのウィンドウと往復遅延、サーバの処理などである。回線速度は経路全体の上限の一つにすぎず、最も遅い箇所が全体を決める。
午後での問われ方
- データ量と許される時間、伝送効率の条件から、必要な回線速度を計算させる
- 音声の符号化速度とヘッダー長から、通話1本あたりの帯域と、同時通話数に必要な回線速度を求めさせる
- 回線を増速しても応答が改善しない理由を、伝搬遅延や機器の処理、TCPのウィンドウから説明させる
- 契約速度とポート速度の違いから、シェーピングを設定する機器と目的を答えさせる
- 速度とデュプレックスの設定の食い違いによる障害の原因を、設定や表示から特定させる
参考資料
- NIST:Prefixes for binary multiples
- RFC 2863:The Interfaces Group MIB
- RFC 3551:RTP Profile for Audio and Video Conferences with Minimal Control