静的ルーティング

読み:せいてきるーてぃんぐ / 英語表記:static routing

宛先ネットワークと転送先の対応を、管理者が手動で設定する経路制御方式である。設定した次ホップや送出するインタフェースに従ってパケットを転送し、ルーティングプロトコルによる経路学習を必要としない。

イマシルちゃんの解説

支店から本社への回線が一本だけなら、本社宛ての通信をどのルータへ渡すかをあらかじめ決めておけるよ。
静的ルーティングは、このように宛先と転送先の対応を管理者が設定する方式なんだ。
ルータはその設定を使って、届いたパケットを次の相手へ送るよ。
設定した経路を静的ルートといい、ルータ同士で経路情報を交換しなくても使えるの。
小さなネットワークや出口が決まった場所では、経路を管理しやすくなるんだ。
ただし、その設定だけで回線の先の故障まで分かるわけではないから、障害時にどう切り替えるかも考えておくよ。

より深い解説

宛先と転送先を設定する

静的ルーティングでは、管理者が設定した経路を静的ルート、またはスタティックルートという。経路の基本となる情報は、どの宛先を対象にするかと、選ばれたパケットをどこへ渡すかである。

宛先ネットワークは、共通するアドレスの上位部分であるプレフィックスと、その長さで表す。転送先には、次にパケットを渡すルータである次ホップのIPアドレスや、送出に使う出力インタフェースを指定する。両方を指定する形式もある。

例えばルータAの接続先に、192.0.2.2を持つルータBがあるとする。Bの先にある198.51.100.0/24へ送るためのCisco IOSの設定例は次のとおりである。Aから192.0.2.2へ直接到達できることを前提とする。

ip route 198.51.100.0 255.255.255.0 192.0.2.2

最初の二つのアドレスは宛先ネットワークとサブネットマスク、最後は次ホップを表す。これはAからBへの転送先を指定する設定であり、Bより先の経路や、相手から戻る経路まで同時に作るものではない。

次ホップのアドレスを設定する場合、その相手へ実際に到達できる必要がある。直接接続していない相手を指定できる機器では、その相手への経路をさらに調べる再帰的な経路解決が行われる。設定が存在しても解決できなければ、有効な経路として利用できない。

出力インタフェースだけを指定する形式にも注意する。Cisco IOSのイーサネット接続では、遠隔の宛先ごとにARPで配送先を調べ、相手側のプロキシARPに依存する場合がある。同じインタフェースの先に複数のルータがいる構成では、次ホップも明示するなど、機器と接続方式に合う指定を選ぶ。

メリット:経路交換のための通信を増やさず、少数の経路を明確に管理できる。 一方、ネットワークの追加や接続先の変更を各ルータへ反映する作業は管理者が担う。

広い宛先と特定の宛先を使い分ける

特定のホスト1台だけに一致する経路をホストルートという。IPv4では/32、IPv6では/128で指定する。反対に、全てのアドレスに一致する最も広い経路がデフォルトルートであり、IPv4では0.0.0.0/0、IPv6では::/0と表す。

デフォルトルートは、より具体的な有効経路がない宛先に選ばれる。例えば、あるルータに次の経路が採用されているとする。

宛先の範囲転送先
198.51.100.25/32ルータB
198.51.100.0/24ルータC
0.0.0.0/0ルータD

198.51.100.25はBへ、同じ/24に属する198.51.100.80はCへ、それ以外で表の上二行に一致しない宛先はDへ送る。一致するプレフィックスが複数あるときに最も長いものを選ぶ規則がロンゲストマッチである。

この最も広い経路も静的に設定できる。ただし、デフォルトルートという名称は宛先の範囲を表しており、設定方法を表してはいない。BGPなどで学習する構成もある。

経路情報源の優先度と転送時の照合を区別する

同じ宛先プレフィックスへの経路が、静的設定とBGPなどの複数の情報源から得られることがある。その場合は、ルータ内で経路情報源の優先度を比較し、どれを経路表へ採用するかを決める。

この比較に使う値をアドミニストレーティブディスタンスという。Cisco IOSでは、通常は値が小さい方を優先する。既定値の例は静的経路が1、eBGPが20、OSPFが110である。いずれも利用可能な同一プレフィックスの候補であれば、値が1の静的経路を残したままBGPを導入しても、BGP経路へ転送が切り替わるとは限らない。

この値は全機器共通の規格値ではない。 Junos OSではpreferenceと呼び、通常の静的経路の既定値は5である。こちらも値が小さい方を優先するが、設定値や情報源の順位は製品の仕様で確認する。BGP内で値の大きい方を優先するLOCAL_PREFとも別の比較である。

ここで比べるのは、同じ宛先と長さを持つ経路の候補である。異なる長さの経路が経路表に採用されていれば、通常のIP転送ではロンゲストマッチに従う。例えば静的な0.0.0.0/0とBGPの198.51.100.0/24があれば、その/24宛てでは後者を使う。静的経路だから宛先の範囲に関係なく常に勝つ、という意味ではない。

予備の経路を使える条件を決める

主経路より優先度を下げ、主経路が利用できなくなったときに採用させる静的経路をフローティングスタティックルートという。フローティングスタティックとも呼ぶ。

例えばCisco IOSで、198.51.100.0/24への主経路をOSPFから学習し、その比較値が110であるとする。同じ宛先への静的経路を200に設定すれば、通常はOSPF経路を使い、それが失われたときに利用可能な予備経路を採用できる。

ただし、予備が選ばれるには、主経路が使えないことをルータが認識する必要がある。 直結したインタフェースのダウンなどで静的経路が無効になる場合はあるが、その先の回線だけが故障しても、手元のインタフェースと次ホップへの経路は有効なまま残ることがある。

そこで、監視した対象の状態を経路の有効・無効へ連動させるトラッキングを利用できる。Cisco IOSのIP SLAは、確認用の通信を送って到達性や応答時間などを測る機能である。その結果を追跡するオブジェクトと静的経路を関連付ければ、到達できなくなった主経路を外す構成にできる。

監視対象は検出したい故障に合わせる。直結ルータの応答だけでは、その先の障害は分からない。また、主回線の確認用通信が予備回線へ迂回すると、主回線が回復したと誤判定する場合がある。確認用通信がどの経路を使うかも決める。監視間隔や失敗回数の考え方は死活監視の記事で扱う。

行き帰りを確かめて移行する

通信を成立させるには、要求が相手へ届く往路と、応答が送信元へ戻る復路をそれぞれ確認する。片側のルータに宛先への静的経路を追加しても、相手側に送信元ネットワークへの経路がなければ、応答を受け取れない。

動的ルーティングへ移行する場合は、経路の受信を確認しただけで旧設定を削除しない。次の順で状態を確かめる。

  1. 同じ宛先について、設定中の静的経路と動的に学習した候補を確認する。
  2. どの候補が経路表に採用され、次ホップへどのように到達するかを確認する。
  3. 旧経路を除いた場合の往路と復路を、関係するルータごとに追う。
  4. 通常時と障害時の転送を試験し、旧経路を整理する。

移行途中に二つの装置が同じ宛先を互いへ送り返すと、ルーティングループになる。完成後の設定だけでなく、変更の途中と切戻し時の設定も確認する。

参考資料

実際の試験ではここに出る!全1問

ネットワークスペシャリスト

午後Ⅱ

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