回線交換
通信を始める前に両端間の通信路を設定し、通信終了まで必要な伝送資源を占有して使う交換方式である。確保する対象は物理的な線そのものに限らず、一本の伝送路を分割したチャネルも含む。
イマシルちゃんの解説
回線交換は、通信を始めるときに相手までの通り道と、その通信に使う容量を確保する交換方式なんだ。
従来の電話網なら、電話がつながってから切れるまで音声を流すための分が用意されるよ。
会話が途切れている間もその分を持ち続けるので、途中で別の通話に容量を取られにくいんだ。
ただし、必要な空きがなければ新しい通話を始められないこともあるよ。
また、一組の電話のために長いケーブルを一本ずつ敷くという意味ではないんだ。
同じ伝送路を細かく分けて、通話ごとに決まった部分を割り当てることもできるよ。
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より深い解説
通信を始めてから終えるまで
回線交換では、データを流す前に交換機を介して両端間の接続設定を行う。経路上の各区間で使用可能な資源を確保し、それらをつないで端から端までの通信路を成立させる。通信中はその割当てを保ち、終了時に解放して別の通信へ使えるようにする。ITU-T Q.9の用語1125 も、一回の通信が続く間に用いる接続を回線の交換によって形成する方式として定義している。
電話における一回の接続要求や通話を扱う単位を呼という。発信先の指定や呼出し、切断などの制御情報を交換する機能はシグナリングと呼ばれる。音声などの利用者データを運ぶ機能とは役割が異なる。接続要求の処理に時間がかかることと、つながった後のデータ転送が遅いことは区別して考える必要がある。
また、端末Aから交換機Bを経由して端末Cへ接続するなら、AからBまで空きがあってもBからCまでの資源が足りなければ、その経路では通信路を完成できない。確保する対象は一か所の装置ではなく、経路全体である。
一本の伝送路に複数の通信を載せる
通信路を確保することは、利用者ごとに専用のケーブルを敷くことと同じではない。一本の物理的な伝送路を複数の通信に使う多重化と、通信ごとの資源確保は両立する。回線交換でいう専有は、割り当てられた論理的なチャネルを他の通信に奪われず使えるという意味を含む。
例えば時分割多重では、繰り返される時間の枠の中に通信ごとの送信区間を設ける。この送信区間をタイムスロットという。毎回同じ割当てを繰り返すことで、各通信に一定の伝送能力を与えられる。データを送らない瞬間があっても、その通信の割当てを維持する構成では他の通信が自由に利用できるわけではない。周波数帯を分ける方式でも、同じ伝送媒体に複数のチャネルを収容できる。
例として、一定周期で繰り返す枠に四つの利用者用区間を設け、それぞれを通話A〜Dへ割り当てる。通話Aが一時的に無言でもAの区間を保持するのが固定割当ての考え方である。転送すべきパケットがある通信へその都度送信機会を与えるパケット交換とは、空いている容量の扱いが異なる。TDM回線の構造についてはRFC 4197 第1.1節 が整理している。
接続後の品質と容量の使い方
一定の容量が確保されるため、回線交換は継続的に一定量の情報を送る用途と相性がよい。接続後は他の通信の一時的な送信量が増えても、確保した区間を利用する転送が影響を受けにくい。パケットごとに混雑した送信待ちの列へ並ぶ構成と比べると、遅延の変動を見積もりやすい。
ただし、遅延がゼロになるわけではない。信号が伝わる時間や交換機での処理、時分割で自分の送信区間が来るまでの時間は発生する。回線を確保しただけで伝送誤りがなくなるわけでもなく、必要な誤り制御は別に考える。
容量を保持する利点は、送る情報がない時間も容量を使えないという費用と表裏一体である。短い要求と応答の間に長い空き時間がある通信では、通信中ずっと確保した容量の利用率が低くなりやすい。一方で全ての通信が常時大量のデータを送るなら、パケット交換に変えるだけで必要な総容量が小さくなるとは限らない。
満杯になったときの扱い
必要な空きがない接続要求を待たせずに拒否する構成では、通信が成立しない呼損が生じる。発生した接続要求のうち、そのように接続できない割合を呼損率という。回線交換の容量設計では、既に確保した通信の品質に加えて、新しい通信をどれくらいの割合で受け付けられるかも評価する。ITU-T E.600 は、空きがなければ待たせない方式と、空きを待たせる方式を区別している。
例えば経路の前半で三つ、後半で二つのチャネルを使用でき、各通信が両区間を一つずつ必要とするとする。別経路がなく、他の通信もない条件で、この経路に同時に設定できる通信数は2である。区間ごとの数を足すのではなく、経路上で最も少ない区間に制限される。
ここでいう接続要求を待たせることは、接続後のデータをパケット単位で待たせることとは異なる。どの単位の要求が、どの資源の空きを待っているのかを明確にすると、交換方式と待ち行列の関係を整理できる。
必要な回線数を見積もる
資源を確保してから返すまでの時間を保留時間と呼ぶ。通信の発生率と平均保留時間を掛けると、平均的にどれだけの回線を必要とするかを示す呼量が得られる。呼量にはアーランという単位を使う。発生率と時間の単位をそろえて計算することが重要である。
例として一時間に120回の通信要求があり、各通信が平均90秒だけ一回線を必要とする条件を考える。加わる呼量は 120 × 90 ÷ 3,600 = 3 アーランとなる。これは通信の重なりを平均した量であり、三回線あれば全ての要求を受け付けられるという意味ではない。発生時刻の偏りによって四つ以上の要求が重なることがあるためである。
必要回線数は、加わる呼量と許容する接続失敗の割合から決める。呼量と回線数の対応表を使う問題では、指定された失敗割合の列を見て、計算した呼量以上を収容できる最小の回線数を選ぶ。どの確率モデルを使うかは、あふれた要求を待たせるか、再発信をどう扱うかなどの条件にも依存する。単位の意味と計算の詳細はアーランの記事で扱っている。
接続がある通信を全て同じにしない
通信前に接続を作ることと、通信中の伝送能力を一定量確保することは別の性質である。パケット交換にも、事前に論理的な通信路を設ける仮想回線方式がある。例えばX.25では接続を設定した後でデータをパケットとして転送する。RFC 1356 は、X.25の論理的な接続上でIPなどを運ぶ方法を規定している。
TCPのコネクションも端末間で通信の状態を管理する仕組みである。接続したという理由だけで、途中の全ルータや回線に一定の伝送容量が予約されるわけではない。比較するときは「通信状態を管理するか」と「ネットワークの資源を確保するか」を分けて確認する。
| 比較する点 | 回線交換 | パケット交換 |
|---|---|---|
| 転送の基本 | 通信のために確保したチャネルを使う。 | データをパケット単位で中継する。 |
| 送るデータがない間 | 接続が続く間は割当てを保持する。 | 他の通信のパケットに送信機会を使える。 |
| 混雑の現れ方 | 新しい接続を受け付けられない場合がある。 | 待ち時間の増加やパケットの損失が起こり得る。 |
| 事前の接続 | 通常は通信開始前に設定する。 | 設定する方式と設定しない方式がある。 |
パケット交換でも資源予約や送信順序の制御によって品質を管理できる。この表は基本的な資源利用の違いを示しており、個々のサービスの品質保証の有無は別に確認する必要がある。
提供されるサービスと内部の運び方
利用者から回線のように見えるサービスでも、事業者網の内部で同じ方式を使っているとは限らない。TDMの連続したビット列をパケットに収容し、受信側で元の形式に戻す回線エミュレーションという技術もある。RFC 4553 はその一方式を定義している。利用者側の見え方と、網内でのデータの運び方は分けて理解する。
また、電話サービスが提供されているという事実だけでは、音声が回線交換で運ばれていると判断できない。IP電話では音声をパケットとして運ぶ。サービス名や端末の外観だけでなく、接続の設定方法と資源の割当てを確認する必要がある。
障害や安全性も資源の確保とは別に検討する。経路上の回線が切れれば通信は影響を受け、継続できるかは保護経路や復旧機能に依存する。チャネルを分けていても、それだけで通信内容を暗号化したことにはならない。回線交換を理解する際は、容量の確保が提供する性質と、冗長化や暗号化が提供する性質を区別することが重要である。