IPsec
ネットワーク層(IP)で、通信の暗号化や認証を行うためのプロトコル群。暗号化と認証を行うESP、認証だけを行うAH、鍵を交換するIKEなどからなる。拠点間を結ぶVPNでよく使われる。
イマシルちゃんの解説
TLSは、Webやメールみたいな、アプリケーションごとに暗号化する仕組みだったよね。
IPsecは、もっと下の「IPのレベル」で暗号化しちゃうんだ。
だから、上で動いているのがWebでもメールでも何でも、まとめて守れるんだよ!
本社と支社をインターネット越しに、安全なトンネルでつなぐときなんかに大活躍するんだ。
より深い解説
定義
IPsec(IP Security)は、RFC 4301などで定められた、IP層でパケットの機密性、完全性、送信元の認証、リプレイ攻撃の防止などを実現するためのプロトコル群である。IP層で動作するため、上位のアプリケーションは、IPsecを意識せずに保護を受けられる。
構成するプロトコル
| プロトコル | 役割 | IPのプロトコル番号 / ポート |
|---|---|---|
| ESP(Encapsulating Security Payload) | 暗号化と認証(完全性) | プロトコル番号50 |
| AH(Authentication Header) | 認証(完全性)だけ。暗号化はしない | プロトコル番号51 |
| IKE(Internet Key Exchange) | 暗号化のアルゴリズムの合意と、鍵の交換 | UDPの500番(NAT越えでは4500番) |
SA(セキュリティアソシエーション)
IPsecで通信する2つの機器の間で、どの暗号アルゴリズムと鍵を使うかなどの取り決めを、SA(Security Association)という。SAは片方向ごとに作られるため、双方向の通信には、少なくとも2つのSAが必要になる。SAは、SPI(Security Parameter Index)という番号で識別され、ESPやAHのヘッダーに含まれる。
SAの取り決めや鍵の交換は、IKEが自動で行う。ESPやAHのヘッダーそのものが、アルゴリズムを交渉することはない。
2つのモード
| モード | 保護する範囲 | 主な用途 |
|---|---|---|
| トランスポートモード | 元のIPパケットのデータ部だけ(元のIPヘッダーはそのまま) | ホスト同士の通信 |
| トンネルモード | 元のIPパケットの全体を、新しいIPヘッダーでカプセル化する | VPN装置同士(拠点間VPN) |
ESPのトンネルモードでは、元のIPヘッダーも暗号化されるため、拠点の内部で使っているIPアドレスを、インターネット上から隠すことができる。
使われる主なアルゴリズム
| 目的 | 主なアルゴリズム |
|---|---|
| 暗号化 | AES(CBC、GCM)、3DES(現在は非推奨) |
| 認証(完全性) | HMAC-SHA-256、HMAC-SHA1 |
| 鍵交換 | Diffie-Hellman |
HMAC-SHA1などのHMACは、改ざんを検出するためのメッセージ認証のアルゴリズムであり、暗号化のアルゴリズムではない。AES-GCMのように、暗号化と認証を同時に行う方式(認証付き暗号)もある。
IPsecとNAT
AHは、IPヘッダーも含めて完全性を保証するため、途中のNATでIPアドレスが書き換えられると、認証に失敗する。ESPも、ポート番号を持たないため、NAPTを通過できない。この問題を解決するため、ESPのパケットをUDPの4500番でカプセル化するNATトラバーサル(NAT-T)が使われる。
TLSとの比較
| IPsec | TLS | |
|---|---|---|
| 動作する層 | ネットワーク層 | トランスポート層とアプリケーション層の間 |
| 保護の対象 | IPパケット(すべてのアプリケーション) | TLSに対応したアプリケーションの通信 |
| 主な用途 | 拠点間VPN、リモートアクセスVPN | HTTPS、SSL-VPN |
実際の試験ではここに出る!
- ネットワークスペシャリスト 令和7年度 春期 午後Ⅰ 問1
- ネットワークスペシャリスト 令和7年度 春期 午後Ⅱ 問2
- ネットワークスペシャリスト 令和6年度 春期 午前Ⅱ 問21
- ネットワークスペシャリスト 令和5年度 春期 午前Ⅱ 問9
- ネットワークスペシャリスト 令和3年度 春期 午前Ⅱ 問11
- ネットワークスペシャリスト 令和3年度 春期 午前Ⅱ 問17
- ネットワークスペシャリスト 令和元年度 秋期 午前Ⅱ 問1
- ネットワークスペシャリスト 平成30年度 秋期 午前Ⅱ 問19